2006.09.16 Boston

[Setlist]
I Can't Explain / The Seeker / Anyway Anyhow Anywhere / Fragments / Who Are You / Behind Blue Eyes / Real Good Looking Boy / Sound Round / Pick Up The Peace / Endless Wire / We Got A Hit / They Made My Dreams Come True / Mirror Door / Baba O'Riley / Eminence Front / Black Widow's Eyes / Mike Post Theme / You Better You Bet / My Generation / Won't Get Fooled Again

(encore) Pinball Wizard / Amazing Journey / Sparks / See Me Feel Me - Listening To You / Tea And Theatre 


2度目のアメリカ旅行。目的地はBostonとNY。敬老の日を含んだ3連休に有給休暇を2日つけて3泊5日の強行ツアーを敢行した。

BostonはNYから北へちょっと行ったところ(それでもバスで4時間程)。先週から北米ツアーを始めたThe Whoも、NYを中心にまずは東海岸の近場をまわっている。Bostonに対する私のイメージと知識は、京都の姉妹都市、マサチューセッツ工科大学、ボストン茶会事件(Boston Tea Party)といったくらい。そして私の「Boston Who Party」は、会場向かいのパブから始まった。



今回のBostonとNYのライブ前には、近くのパブでThe Whoフリークたちと集おう!と誘われていたので、全米のコアなファンに出会える良い機会だと思い、ドキドキしながら参加させていただいた。パブはあらかじめThe Who Mailing Listなどで告知されており、Bostonでの場所はThe Harp。会場前のホテルに転がり込むことができたため、そのパブも徒歩数分だった。
17時過ぎ。知り合いとパブに行くと、そこには既にたくさんのファンが集い、飲み、騒いでいた。The Whoの音楽もガンガン流れ、「アリーナ2列目の席が当たる抽選会」も行われており、まさにパーティーだった。私を誘ってくれた方は長年のフリークさんだったので、その場にいるファンの人たちとは顔なじみ。みんなと再会し挨拶を交わしている姿を見たら、なんだかこっちまで熱くなってきた。そして羨ましかった。アメリカではツアーの度に、全米各州からファンが集結し、何年も何年もこうやって楽しんできたのかと・・・(同パーティーはNYでも続く)。

パブで飲んでいたファンたちは誰も前座を見る気がなく、私もThe Whoの開演に合わせて会場(TD Bank North Garden)へ向かった。残念ながら抽選会で2列目の席のチケットは外れてしまったが、会場入りして自分の席についただけで胸が高鳴った。Pino側。そして念願のステージ真横。人によってはこの席を最悪と言うかもしれない。というのも、PeteとRogerの姿を正面から見ることができず、本当に真横か背中ばかりだからだ。でも、ステージ全体を近くからきれいに見るたい人にはお勧めの席である。特に・・・ドラムセット全体を見たい人には。

20時半頃に席についたが、既に前座は下がっていた。UK&欧州ツアーのCasbah Clubよりも時間が短いようだ。ステージではスタッフが忙しく動き回り、バックのスクリーンにモッズマークが5つ映し出された。UK&欧州ツアーではHyde Parkでしか使われなかった映像の演出が復活したのだとわかり、嬉しくなった。しかもパネルが5枚。確かHyde Parkではスクリーンは3分割だった。ということは・・・きっと違うモノが見れるはず!

正確には時間は覚えていないが21時前、メンバーがステージ右より出てきた。私の席のように真横まで席があるタイプの会場なので、いわゆる袖というものはない。メンバーが出てきたのも、「右袖」ではなく、「ステージ下の右側の階段」といった方が適切だろうか。Peteはお馴染みの黒の上下でキメ、Rogerは見覚えのある水色のTシャツ姿。

オープニングから3曲は先のUK&欧州ツアーと変わらず、「I Can't Explain」→「The Seeker」→「Anyway Anyhow Anywhere」。さすがにイギリス人よりも幾分か恰幅がいい人 が多いので、総立ちになったスタンド席はちょっと窮屈だが・・・一人で見ていても独りぼっちじゃない雰囲気が嬉しい。
BostonでのMCは、Stonesネタから始まった。「Mickから電話があってさ」それから「Keithとリハで」云々。本日もPeteの舌は冴えている・・・と思ったが、全体的にはUKツアーの時よりもMCはグンと減っていたような気がする。だからといって、雰囲気が悪かったわけではないのだが。

出だしの3曲でノッタところで、次から徐々に新曲が入ってきた。まずは「Fragments」。バックスクリーンに映ったのは、Hyde Parkの時に「Love Reign O're Me」で使われていた海の映像だった。今、このレポートを書きながら曲を思い出そうとしているのだが、思い出せない。波が砕ける映像にはピッタリだと感じたというのが、曲に対する唯一の記憶。「Mike Post Theme」のメロディがすんなり頭に入ってきたのと比べると、ちょっとインパクトに欠ける曲だったのかもしれない。こういう曲こそ、アルバムが出たときに歌詞をじっくり読みながら聴くのが楽しみだ。
しかしバックの映像から「Love Reign O're Me」は演らないんだな、と変なところで邪推してしまったりするのは良くないと感じた。ライブは、やはりノリに身をまかせるのが一番だと・・・。ちなみに、「Love Reign O're Me」がなくなったことによって、『QUADROPHENIA』からの曲はセットリストから完全になくなってしまった。ちょっと寂しい気もするが、1曲だけあっても『QUADRO』らしくない、とポジティブに考えることにした。

そしてまた見たことのある映像・・・「Who Are You」。これはHyde Parkのとまったく同じ使い方で同じタイミングだった。曲に合わせて列車が発車し、曲が終わると終着駅Brightonに。疾走感というか、列車が進むレールと景色がステージに奥行きを持たせ、曲がいっそうダイナミックに聴こえた。野外で見るスクリーンよりも室内の会場で見るほうが見栄えも良いというのも感じた。

ミニオペラが始まる前に、Peteの軽いMCが入った。「これからやるのは、(こないだ発売された)6曲入りの『ENDLESS...』、おっと間違えた。『WIRE & GLASS』から。色々頭の中でこんがらかっててね」。言い訳がましいところが、Peteである。観客も笑っていたが…「Sound Round」が始まると周囲の人たちはほとんど椅子に座ってしまった。もちろん私は立っていたのだが・・・。フロアを見ると、前から5列目あたりぐらいまでの熱心なファンは、さすがにマキシシングルを聴き込んでいるようで、テンションは保たれているままのようだった。
このミニオペラがライブでどのように演奏されるのか楽しみだったので、かなり喰らい付いて聴いてしまった。もちろん曲順はレコードと同じ。ただし、つなぎ目ごとにZakのスティックの音(カウント)が入るのが、生っぽくて感動した。Rogerはタイミングを取るために足を前後に開いて体を揺らし、Peteのギターに負けじと頑張って歌っていた。Boston公演の直前のRabbitの日記によると、「ギターの音が大きく、Rogerは必死」ということが書かれていたが・・・本当にそのようだった。きっとツアーが進むにつれ、新曲を歌いこなしていくうちに、Rogerもリラックスして楽しめるようになってくるのではないだろうか。
このミニオペラについて一番レポートしたいのはバックスクリーンに映し出された映像。今までのThe Whoとはちょっとイメージの違った感じのアニメーションだった。例えて言うならば、『KID A』以降のRadioheadのアートワークに似ている。荒っぽくてシュールで無機質でクール。上手く表現できないのだが、とにかく今までのThe Whoのアートワークでは見たことのないものだった。

新曲とヒット曲での盛り上がりの差が顕著だと感じたのは、次の「Baba O'Riley」。座っていた観客も一斉に立ち上がり大合唱。続く「Eminence Front」(Boston公演からセットリストに追加)も意外なほどの盛り上がりを見せていた。 こうやって周りが立ったり座ったりするThe Whoのライブも初めてだったので、何だか妙な感じがした。当然次の新曲2曲「Black Widow's Eyes」と「Mike Post Theme」(これもBostonからセットリストに復活)では座り……「You Better You Bet」で立ち上がる!
「You Better You Bet」では、Hyde Parkの「Substitute」で使われていた映像がスクリーンに流れたため……アンコールの「Substitute」がないのだということが推測できた。

本編はいつものように、「My Generation」と「Won't Get Fooled Again」で大いに盛り上がりながら終了。アンコールをせがむ「WHOコール」はそんなに激しくないのがちょっと寂しかったが、「Pinball Wizard」での観客の合唱はヴォリューム全開。ステージのバンドも勢いづき、Rogerは「Sparks」でタンバリンを1つ壊し、新しいのに持ち替えるほどの叩きっぷりだった。そしてマイク回しもノリにノリ、ボーカルが入る部分までにキャッチが間に合わず、巻き付けたマイクが腰にあたった拍子にPAのマイクスイッチがオンになったため「ボコ」っと変な音が拾われてしまっていた。ご愛嬌。

実は渡米前に既に始まっていた北米ツアーのセットリストには目を通していた。それなので、この『TOMMY』メドレーが終わった後に新曲「Tea And Theatre」が演奏されるのは分かっていた。しかし……曲を知らないため、その状況が想像できなかった。「Listening To You」で盛り上がった後に続く曲とは?それ以上に盛り上がる曲?それとも逆にしっとりした曲?
答えは後者だった。『TOMMY』メドレーが終わると、Peteがサポートメンバーを紹介し、彼らは挨拶をするとステージを降りていった。そして、そこに残ったのはPeteとRogerのみ。Peteがアコギを奏で、Rogerがマイクの前で体を揺らしながら歌う。片方の手をポケットにつっこみ、もう片方の手には(お茶が入っていると思われる)マグカップを持って。まさにタイトル通り、「Tea And Theatre」だった。会場全体を包み込むような優しさ。そして観客は誰ひとり音を立てず、じっとステージの2人を見つめる。
そう、ステージには2人しかいない。これが残されたメンバーの、PeteとRogerの今の姿なのだ……PeteとRogerの今の関係なのだ。

室内での熱気が嘘のように、外は9月のBostonらしくちょっと肌寒かった。ライブ前にパブで会ったファンの人たちは近くのパブで朝まで騒いでいたようだが、私はホテルに戻り友達と午前2時半ぐらいまでThe Who話に花を咲かせていた。どこの世界に行っても語り合えるThe Whoファンがたくさんいる。そんな事実に感謝しながらBostonの夜は更けていった。

(2006/09/30 b-ko)


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