2006.07.03 BEAULIEU SUMMER POPS 06

[Setlist]
I Can't Explain / The Seeker / Anyway Anyhow Anywhere / Who Are You / Bargain / Behind Blue Eyes / Real Good Looking Boy / I'm One / Mike Post Theme / Baba O'Riley / Love Reign O'er Me / The Kids Are Alright / My Generation / Won't Get Fooled Again

(encore) Substitute / Pinball Wizard / Amazing Journey / Sparks / See Me Feel Me / Listening To You 


昨夜の興奮も覚めやらぬ中、一泊旅行の旅支度をしてLondonはWaterloo駅からSouthamptonへ向けて出発。車内がキレイで快適なSouthWest Trainに揺られること数時間。Southampton駅で乗り換え、Brockenhurst駅へ。ここが今回の会場となるBeaulieu Motor Museumの最寄の駅。イギリスの小さな駅に降り立ったときのワクワク感。たまらない。
予約したB&B(民宿)のオーナーには「バスかタクシーでいらっしゃい」と言われていたのだが、駅前のバス停にバスがやってくる気配はまったくない。少しすると、同じ電車から降りたと思われる30代カップルもバス停のところにやってきた。クーラーボックスを抱えている。見た感じ、明らかに地元の人ではない。そして、お互いの視線が交錯したときに察した。彼らもThe Whoファンだと。
「どうしましょうか?バス来ませんね。」「しょうがない、タクシー呼んで割り勘しようか?」「私のB&Bは、会場の(200m)手前なんで、先に降りるのでいいですか?」「もちろん。」
そして私たち3人はタクシーでBeaulieuの村へ向かった。駅も小さかったが、そこから離れるにつれどんどんと景色はのんびりしたものになっていく。両側に草原。そこをポニーが駆けている。カップルは村にパブや食料を調達できる店があるかどうか訊き、タクシー運転手はそれに答えて、私たちは軽いおしゃべりを楽しんだ。10分ぐらい走ったところで、運転手が「ここが泊まるB&Bだと思うよ」と言って、タクシーを横付けしてくれた。すぐ先には会場となるミュージアムの入り口を指す標識があり、こんな近くのB&Bを予約できた幸運をありがたく思った。

B&Bのご主人Richardもとても素敵な人だった。60年代のThe Who、Pink Floyd、Jimi Hendrix…なんでも見ている人だった。だから、私がこんなところ(田舎)までThe Whoを追いかけてきたことに共感してくれ、とっておきの音楽話をたくさんしてくれた。時計が16時をまわったところで、私は早めに会場に行くことを告げ、先にB&Bを出た。RichardとパートナーのJennyも今夜はライブに行くことになっていた。彼らだけではない、Richard曰く、音楽好きな村人はみんな見に行くことになっていた。



B&Bを出た私は一旦会場とは逆方向(村の中心部)へ行き、飲み物と夕食代わりのものを雑貨屋で買い出した。再び会場付近に戻ってきたのは17時頃だっただろうか。ポニーの落とし物に気をつけながら農道を歩いていると、草原の向こうの林の奥から「Behind Blue Eyes」が聴こえてきた。サウンドチェックだ。私の足取りも自然と早くなる。
ミュージアムのゲートに着くと、駐車場に入るための車が行列になっていた。交通手段が限られているため。おそらく9割以上のオーディエンスが車で会場入りしているのだろう(もちろん、スクーターで来ている人もいた)。駐車場に止まっている誰かのバンを見るだけで、「IN THE ATTIC」のエアストリームを思い出し、ちょっとテンションが上がってきた。

会場はミュージアムの裏にある空き地(駐車場?)だった。その周りも原っぱで、私たちは土手の横の小道に並ばされた。小さなコップで無料ビールを配っていたのが、なんとも微笑ましかった。(ビールのせいではないけれど)Hyde Parkで見かけたファンの人たちと比べて、今日のファンはずいぶんと年齢層が高いな、と感じた。列に並んでいる人たちはみんなご自慢のThe Who Tシャツを着ていた。
そして、開場しても誰も焦って走っていなかった(そこらへんにも、年齢層の高さを感じた)。つまり…、すべてがのんびりとしていた。だから私も走ることなく、RogerとSimonの間ぐらいになる最前列に立つことができた。
座席(シート)チケットの場所はどこになるのかと不思議に思い振り向くと、Pete側のステージから10か20m程離れたところに、草野球の観客席のような簡易スタンドが設置されていた。この会場のキャパからチケットは4000枚ぐらい出されていたようだが、完売しなかったところをみると、オーディエンスは今ツアー最小規模だったのではないだろうか。

Hyde Parkで見ることができなかったCasbah Clubの前座は、文句なしに素晴らしかった。昨年のステージとは違い、アルバム1枚分の貫禄がついていた。手が届くぐらい近くに立っているSimonを見て、この後に出てくるThe Whoが、Rogerがどれだけ近くに……と、想像するだけで……。
いつかCasbah Clubについてちゃんとしたライブレポを書いてみたいと思うが、ここはThe Whoのことに終始してみたい。

と言いつつも、このライブレポはZakのことに終始してしまうことを先にお詫びしておかなければいけない。
もしツアーを通して数公演見ることができるなら、そのうちの1公演はZakだけを見てみたい。100%とは言わずとも、90%はZakを見ていたいと思っていた。そして、最前列で(しかもモニターやカメラに邪魔されずに)Zakを見ることが出来るポジションに居る今回が、そのチャンスだと思った。

BeaulieuのセットリストはPeteのソロステージが「Drowned」から「I'm One」に替わっただけで、他はHyde Parkのものと同じだった。2公演目になると、だんだんとステージ進行(ノリ)も上手くつかめるようになってくるので、余裕を持って楽しめるようになってくる。
まずはメンバーがステージに上がってくる前に、じっくりとセッティングを見てみた。Hyde Parkのように大きなステージではなかったので、ドラムセットの方までよく見ることができた。
今回のツアーでZakが使っているドラムキットは、2000年から使っているものと基本は同じ。DWのハードに、Zildjianのシンバルとスティック。ツアーごとにハードの色を変えていて、今回のドラムキットは白(パール)にラメが入っているものだった。この白のツーバスドラムキットを見て、まず思い出したのはKeithが1976年に使っていた白のドラムだった。Zakの初めてのドラムは父親Ringoから貰ったものだったが、Zakが本当に欲しいと思っていた「大きなドラムキット」を初めてくれたのはKeithだった。それがZak12歳の誕生日(1977年)のことで、Keithは自分とおそろいの白のドラムキットをあげたのだった。もちろん今回のドラムキットがこのエピソードと直接関係しているわけではないのだが、なんだかKeithを彷彿させてくれて嬉しかった。

「I Can't Explain」で幕が開け、続いて「The Seeker」。自分でも笑ってしまうのだが、どんなに目と鼻の先にRogerがいて熱唱してようとも、私にはZakしか映っていなかった。近くでドラムを見ることがこんなに面白いとは思わなかった。耳には大好きなThe Whoの音楽が流れ、そこで自由に動き回るドラム。そういえば、1997年のQUADROPHENIAツアーの頃のインタビューで、「The Whoが一番自由に演奏できるバンドで、ドラマーとして最高のジャムができる場だと思う」と言っていたのを思い出した。そして、「演奏中はPeteを見ている」とも言っていた。それを目の当たりにできたのは、次の「Anyway Anyhow Anywhere」だった。
もちろんいつでもZakはPeteを見ているが、いわゆる火花が散るようなドラムとギター合戦に感動した。Rabbitも「ライブでZakとPeteがヤリ合っているのを見るのが好きだ」と言っていた。PeteがZakに求めているのは、Keithのコピーでなく、KeithのようにPeteのギターに応戦できるドラムだということに納得した。

「Who Are You」ぐらいから、Zakの笑顔が多いことに気がついた。どちらかと言うとステージ上ではあまり笑わない人だが、とても気持ち良さそうに叩き、非常にご機嫌の様子だった。Peteのソロコーナーが終わって、袖から再びステージに戻ってきたときも、はしゃいでいる感じで軽いステップを踏んでドラムの台に飛び乗るほどだった。また、オーディエンスへのアクションも良かった。フレーズの締めのところで、いつもは叩ききった後に宙に向けるスティックも、今日のステージではオーディエンスを指して笑ってくれていた。
さらに驚いたのは、「Baba O'Riley」の前奏部分。シンセサイザーのループが流れるところ。なんとKeithさながらに……ドラムスティックでトライアングルを描き、おどけた様子で指揮者のマネをしたのである。横にいるSimonも一緒に笑っていた。今まで見てきた「Baba O'Riley」の映像で、スティックで指揮をするZakなんていただろうか…。私は知らない。

前日のHyde Parkや2日後のLiverpool(1日目)は、ツアー内でも出来の良い部類に入り、「伝説」になりうるかもしれない。それに比べBeaulieuの公演は、アットホームだけれど、とても地味で、行った人以外には何も意味をなさない公演になってしまうだろう。しかし私にとっては、すでに想い出以上の伝説以上の想い出になっている。とにかく不思議な時間と空間だった。

Peteのメンバー紹介がどことどこの曲間だったかは忘れたが、そこでもZakのオーバーアクション(?)は続く。Pino、Simonと紹介が終わり、Zakの番。いつものように名前を言われ立ち上がり、右左正面と3方向に頭を下げ、着席。その後に続けられたPeteの嫌みにガックリとうなだれ、頭をタムにもたれさせヘタばってみせた。「まるでOasisのメンバーがいるみたいだろ」というところでも、苦笑い。定番の「ペットボトルを掲げてクールなポーズ」はどこへやら…である。でも、そんなZakを見て両脇から笑っているSimon、Rabbit、Pinoの雰囲気がまた楽しげ。これがサポートメンバーのコンディションの良さを証明してくれていた。

アンコールの『TOMMY』メドレーは、Peteの「F*** Opera……F*** Portuguese Opera」というMCから始まった。これはもちろん、2日前にW杯でイングランドがポルトガルに負けたことからの、軽い冗談。もちろん「クソ楽曲」 なんかではなく、素晴らしい『TOMMY』のメドレーはいつものように会場を最高潮に導き、Rogerの声がPeteのギターと共にオーディエンスとステージを一体にしていった。
演奏が終わり、RogerとPeteが肩を組み、頭を下げて挨拶し、袖に下がっていく。そこまでがThe Whoのステージ。もちろん鳴り止まないオーディエンスの歓声もそこに含まれる。これが通常。しかし、BeaulieuでのZakサプライズ(?)はまだまだ続いていた。Simonと一言二言交わした後、ステージの端まで出てきてオーディエンスにスティックを渡したのである。

あまりに不思議なものをたくさん見たため、The Whoのステージを見終えた気分ではなかった。

B&Bに戻ると、RichardとJennyはすでに友達と庭で飲み始めていた。私はまだボーッとしたまま挨拶をし、シャワーを浴びに部屋へ行った。
翌朝、朝食を取りに下階へ行くと、ダイニングルームにはすでに他の泊まり客がいた。1組は1965年からThe Whoを見ている男性と1971年から見ている女性のカップルで。もう1組は、父親と息子だった。彼らと昨晩の話をしたが、やはり私と同じ目線でライブを見ている人はいなかった。もしかしたら、私が言っていることはすべて幻だったのではないかと思い、心配になってきた。
しかし、食後に部屋に戻り、昨晩ベッドに入る前に書いたメモを見てみると…そこには汚い字で、

・ポニー / フィールド
・ザック紹介、オアシス
・Mike Post、サイモンと見た、カウントの声大きい
・Fuckin Opera、ポルトギーズOpera
・Baba、ザック、指揮、Simon笑う
・Drowned → I'm One

などが書きなぐられていた。
今も、そのメモを見ながらライブレポを書いている。Encore SeriesのDVDを見ながらもっと良いライブレポが書けるかもしれないが、ここに書いたことが、正直、100%私が見て感じたこと。そして、WHO's Generation史上最悪のThe Whoライブレポになってしまったことを謝りつつ締めくくりたい。

(2006/08/16 b-ko)


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