2006.07.02 HYDE PARK CALLING

[Setlist]
I Can't Explain / The Seeker / Anyway Anyhow Anywhere / Who Are You / Bargain / Behind Blue Eyes / Real Good Looking Boy / Drowned / Mike Post Theme / Baba O'Riley / Love Reign O'er Me / The Kids Are Alright / My Generation / Won't Get Fooled Again

(encore) Substitute / Pinball Wizard / Amazing Journey / Sparks / See Me Feel Me / Listening To You 


7月2日(日)晴天。今年のロンドンは3年前と同じぐらい猛暑続きとなっている。昨年のまったく同じ日7月2日(土)のLIVE 8と同じ場所で、もう1度The Whoを見ることができるとは夢にも思わなかった。そう、夢…。
Hyde ParkでThe Whoのフルステージを見ることが、私の10年来の夢だった。10年前の6月29日、Prince TrustにThe Who(TED)が出演し『QUADROPHENIA』を演ったとき、私は日本で「イギリスに行きたいよ!」と地団駄を踏んでいた。まだ十分な貯金も、そしてパスポートすら持っていない高校生だった。大好きなドラマーが大好きなバンドに参加すると聞いて、これを逃す自分はなんて不幸なんだと思っていた…。当時の手帳は今でも大切に取ってある。1996年6月29日にはイラストが入っていて、その中でKeithと Zakは肩を組み、片手に1本ずつドラムスティックを持って笑っている…。

あれから…10年。
まずはHyde Parkに行く前に、(Zakもバイトをしていたことがある)Hard Rock Cafeとその裏にあるKeithのフラットを訪れた。Keithのフラットは毎年写真に収め続けている。なんとなくの習慣。ここ数年、改装工事が続いていたため足場が組まれていたが、今は工事も終わりフラット前のプライベートスペースの花壇もキレイに整備され、横の庭には噴水まで出来上がっていた。
Keithが住んでいた上階を見上げ、心の中でつぶやく。「今日のライブ(ドラム)の音、そっち(天国)でも楽しんでね」と。


開場は14時。余裕を持って13時にはボックスオフィスに行ってチケットを受け取った。そこに貼ってあったタイムテープルを見ると、The Whoの出演はメインステージの20:15。The Who Live TVで20:30からフル視聴可能ということだったので、おそらく20:30がスタートになるだろうと思った。
そこで問題だったのがSimonのCasbah Club。彼らの出演はセカンドステージの18:00。Primal Scream(トリ)前になる。フェスティバルのため、メインステージとセカンドステージの行き来は望ましくない。仕方がないのでCasbah Clubはあきらめ、明日からの3公演の前座でのお楽しみに取っておくことにした。


とりあえず、開場までまだ時間があったので、会場となる敷地のまわりをぐるりと1周してみた。そこで会場外にグッズ売り場を発見。フェスでライブを見るのにグッズを買い込むのは荷物になるだろうと、躊躇したのだが。この先3公演でグッズを買うチャンス(時間的余裕)があるかわからないので、とりあえずパンフレットやチケットホルダー、Tシャツ、ドラムスティッック、バッジなどを購入してみた。その他、キャップ、ポロシャツ、ピンバッジ、ワッペン、ライター、キーホルダー、ポスター、コースターなどなど。かなりのグッズが出ていた。
騎馬警察が警備をしているのが、なんともロンドンらしくて嬉しい。
しかし…暑い!日陰を求めて会場を囲む塀ぎわに人々は集まり、私もスペースを見つけて座った。そして先ほど購入したプログラムを開いてみる。ツアー用のは、2002年のものと似たような仕立てになっていて、前回ツアーの写真がふんだんに使われていた。サポートメンバーにも1ページずつ割かれている。中でも嬉しかったのが、見開きで日本公演からのスナップが使われていたこと!なんだか誇らしい。それから、”Music Direction”としてクルーの中に名前を連ねているBilly Nicholls!!

そうこうしているうちに14時になった。メインゲートに並ぶのが遅かった私は、長蛇の列にまみれ、結局入場したのは14時半近かったのではないだろうか。すでに会場内の特設遊園地で遊んでいる人々の声が響き渡っていた。入場とともに一目散にメインステージに向かったため、どのようなアトラクションや売店があったのかはまったく見ていない。ただただ、印象的だったのは…、サンオイルを塗って日光浴気分のイギリス人たち。シートや簡易チェアーを広げてビールをがばがば飲んでいる。男性陣は、ほぼ上半身裸。女性陣もかなりの露出度。本当に、太陽を楽しんでいる感じだった。これからライブが始まるなんて様子はちっとも感じられない。そして、もう1つの感想は、「狭い」ということ。LIVE 8のスクリーンエリアぐらいしかなかったのではないだろうか。実際に目で見るステージセット、スクリーン、観客の散らばり具合…どうもこじんまりとした印象である。Hyde Parkで見れるなら豆粒ぐらいのPete&Roger(Zak)でも良いや、と思っていたのだが…。何やら違う展開になりそうな予感がしてきた。

そんな中、1時間少々待ったところで、1バンド目がステージに上がった。
この時点で、私はかなり前のほうにいて…おそらく10列目以内だっただろう。
The Whoの前に出てくるバンドはもちろんそれぞれ魅力のあるものだった。特に今をトキめくThe Zutonsや、Rogerのお気に入りのRazorlightなんかは若者から圧倒的な支持を受けているようだった。
しかし、個人的な目玉は、Ocean Colour Scene!10年ほど聴き続けているが、彼らの男気は非常にカッコいい。昨年、Oasis(Zak)を見た時も野郎どもがビール片手に肩を組んで大合唱していたのだが。それは彼らの生き甲斐フットボールへの反応と似ているだけ。しかし、OCSはそういった熱さではなく、「友情」とか「青臭さ」とか「どうしようもない自分」をネタにオーディエンスがステージとひとつになれるのである。私的な意見だが、ここら辺がネオ・ネオ・モッズたる所以。The WhoファンがOSCを聴いているかは謎だが、OCSファンはThe Whoを聴いているのである。そう…

Roll a number write another song like Jimmy heard the day he caught the train!

このフレーズをたくさんのイギリス人のファンと叫び、The Whoのステージへの思いはヒートアップしていった。

そして全てのサポートバンドの出演が終わった20時過ぎ。各バンドが使っていた垂れ幕(ロゴなど)が外され、ステージに巨大スクリーンが現れた。今回のツアーフォトグラファーRoss Halfinのアシスタントを務める日本人女性の姿も見える。それから…いつも彼を見ると「始まる!」とテンションが上がる…Bob Priddenの姿も!
スクリーンに少々のトラブルがあるようで、左側の一角に上手く映像が出ていない。それをどうにか解決しようと試みられている。それから、徐々に機材が揃っていった。

20時半ぐらいにセッティングが終わり(映像トラブルは解消しないまま)、The Whoがステージに現れた。右から出てきたのか、それとも左から出てきたのか・・・それすら覚えていない。そして、(Zakがサングラスしている!と、ボーっとしているうちに)1曲目が始まった。「I Can't Explain」。
いつもライブがスタートする瞬間で覚えているのは音ではなく、ファンのボルテージがオンになった空気。自分の意思でCDをスタートさせるのとは違い、生のライブはいつの間にか始まっている。そして、その空気に呑まれる瞬間がたまらない。

私のポジションは5列目ぐらいだったが、それ以上前にはいかない方が良いと判断した。というのも、ステージの高さと返しアンプのため、ステージの奥(ドラム)が見えなくなってしまうからだ。すでに、RabbitとPino、Simonは隠れてしまっている(残念なことに、最後まで彼らの姿はよく見えず、記憶にも残らなかった)。
ふと、後ろを振り向くと・・・。いつの間にか昼間のピクニックムードは一変していた。人人人人…人!遥か彼方まで人の頭が揺れ動いている。

2曲目は久々にセットリストに戻ってきた「The Seeker」。Rogerの声が物凄く出ている。ここ数年ライブで見てきた中でも一番の出来だと思った。そして、「Anyway Anyhow Anywhere」へ。
ここまで3曲でまず目を見張ったのが、バンドのパフォーマンスもさることながら、バックスクリーンの映像。60年代のヒット曲では60年代のバンドの写真や60'sカルチャーの映像を余すとこなく散りばめてくれていた。そう、Keithもちゃっかりライブに参加なのである。スクリーンで堂々とマイクを突き上げる若き日のRogerを背に、熱唱する生のRoger…。何とも不思議な感じ。
続く「Who Are You」では、LondonからBrightonまで走る列車の先頭がとらえた線路が流された。列車の型から、おそらく当時(60年代頃)の映像だろう。そのノスタルジックさと、曲のラストにちゃんと列車がBrightonに到着したタイミングの良さと…全てに感激だった。今回の映像班はかなり頑張っている。(*その後の3公演は会場が小さいこともあり、スクリーンはなかった)

そう言えば、初めてThe Whoを見たのも(Denverの)野外だったな…と、4年前のことを思い出していた。そしてセットは「Bargain」から「Behind Blue Eyes」へ。
4年前の野外は、野外と言ってもすり鉢状の日比谷音楽堂のようなところで、席が決まっていた。しかし今回は本当のスタンディング。日本のスタンディング前方と違って、それほど押されたり揉み合ったりするわけではなかったが、やはり暴れる若者はいた。「Behind Blue Eyes」の中間部、バンドが入ってきたところで突然人の波が襲ってきたのだ。私は少しPete側によけることができたから良かったものの、Rogerの正面のあたりは暴れる若者でヒドいことになっていた。中にいた小さな子供はステージのフェンス側から警備員に救出されていた。この一件のため、残念ながら素敵な曲も全然覚えていない。最後のあたりでZakのサングラスが吹っ飛んだのだけは見たのだが…(曲後に拾って、かけ直していた)。(*註:記憶違いで実際にサングラスが飛んだのは「Bargain」の時だった)

「Real Good Looking Boy」では、姿は見えないものの、しっかりとRabbitの存在を感じることができた。この曲もすっかり合唱されるようになっている。曲が終わるとPeteがギターを下ろし、ヘッドフォンをした。そして簡単なMCでアコースティック・ステージを「Donovan Spot」と紹介した。弾き語りのミュージシャン、例えるのはDylanじゃなくてDonovanなんだ…と、妙に英国的なところに納得してしまった。演ってくれたのは「Drowned」。気持ち良さそうに前に後ろに揺れながら弾いているPeteが印象的だった。オーディエンスも聴き入り、日も落ちてきて…21時をかなり過ぎたところで、やっと夕闇と風が心地よく感じられた。

続く曲もPeteはヘッドフォンをしたままアコギを持っての演奏。これが新曲「Mike Post Theme」だった(ミニオペラとは別物)。曲の出だしはZakのカウントから。そんなに大きな声が出たんだ、とビックリするぐらいな声で「ワン、トゥー、ワン、トゥー、スリー!」と。そこへ軽快にRogerのボーカルが入ってきた。面白い!初めて聴いても体からノレるメロディー。そして覚えやすいサビ。フェスティバルの大舞台でも栄えていた。マキシシングルのミニオペラも楽しみだが、この新曲が入るアルバムにもかなり期待できそうだ。

現在、これを書きながらセットリストを確認してみた。「Baba O'Riley」はライブの中盤で演奏されていたことにびっくりした。記憶の中では序盤だったのだが・・・。とにかく、この曲で「Teenage waste land!」と叫べたことが、Hyde Parkでの最高の瞬間の1つだった。10代の夢から10年後の今日でも、まだ同じだけ、いやそれ以上にThe Whoを好きになっていることを確認できた。
「Love Reign O'er Me」でスクリーンに海が映されて、波が岩にあたって砕け散る映像も圧巻だった。まるでQUADROPHENIAツアーの1コマを切り取ったような・・・。

ライブ中のステージの雰囲気が良いのは見ていて気持ちがいい。特にRogerとPeteが冗談を言い合っているところなど。「The Kids Are Alright」を紹介した後、PeteがRogerに耳打ちをした。そしてRogerがふざけて言った。「俺が忘れてるから、教えてくれたんだよ」と。そしてPeteが「そうそう、新バージョンをね」と返し、即興で全く違うメロディーで「The Kids Are Alright」を弾いてみせた。まるで悪戯っ子のような表情だった。
このツアーでやっている「The Kids Are Alright」はオリジナルに近いショートバージョン。近年のライブで演られていた、中間部に“しゃべり”が入るものではなかった。さっぱりしていて、それはそれで、とっても大好きだ。

ハイライトはアンセム2曲。「My Generation」と「Won't Get Fooled Again」。UKツアー前半でミニオペラがセットリストに入っていたときには、「My Generation」は外されていた。しかし、やはりこれを聴かなければ終わらない。(そして、昨年はOasisで何度もこれを聴かされたが、やはりThe Whoでこのドラミングを堪能したい!)

当然ながら「Won't Get Fooled Again」で最高潮に達し、本編終了。メンバーがステージからさがらないうちに、すでにムードはアンコールへ。「WHO、WHO、WHO、WHO」とコールが湧き起こっていた。
そして、少しの間をおいてからメンバー再び登場。期待している『TOMMY』メドレーの前に、まずは「Substitute」が入った。ここでのスクリーン画面が、またノスタルジック!レトロスペクティブ!60'sカルチャーとモッズをフューチャーしたお洒落なものだった。クラブで踊る若者、The Who、そしてSteve Marriottまで!オーディエンスがスクリーンに映る1つ1つにも反応しているのが面白かった(もちろん私も)。例えば(どの曲のバックだったか忘れたが)映画『さらば青春の光』が使われていて、JimmyがBrightonのダンスホールの2階から飛び降りるシーンがあった。その瞬間にも、オーディエンスは“ドッ”と沸くのである。

そして・・・“これで終わり”を意味する『TOMMY』メドレー。いつだって、全身全霊をかけて歌い上げるRogerはカッコいい。The Whoのライブを見終わった後に、「あーあ、終わっちゃった(物足りないな〜)」と思わないのは、ここで完全燃焼させてくれるからだと思う。バンドと一緒に。

いつの間にか、頭の上は夜空になっていた。ステージの右上に出ている月(Moon)は、三日月(スマイル)だった。

(2006/07/27 b-ko)


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