2004.06.12 Isle Of Wight Music Festival

[Setlist]
I Can't Explain / Substitute / Anyway Anyhow Anywhere / Who Are You / Bargain / Behind Blue Eyes / Baba O'Riley / Punk And The Godfather / 5:15 / Love Reign O'er Me / Eminence Front / Drowned / Naked Eye / Real Good Looking Boy / You Better You Bet / My Generation - Old Red Wine / Won't Get Fooled Again

(encore 1) Pinball Wizard / Amazing Journey - Sparks / See Me Feel Me / Listening To You
(encore 2) Magic Bus


いよいよワイト島フェスである。The Whoにとっては1970年に出演して以来実に34年ぶりとなる。私は無謀にもCardiffに続いて前で見ようと試み、7時間ほど立ちっぱなしで何とか前から2番目ほどのPete前の場所を獲得した。でもその間に見た4バンドもそれぞれ楽しめたし、セキュリティが前の方の人達にまめに水を配ってくれていたので、待つ時間もそれほど苦ではなかった。(さすがにManic Street Preachers演奏中の盛り上がりっぷりはキツかったけど……。)

この時期、イギリスの日の入りは遅い。The Whoが登場したのはまだまだ明るい午後9時頃だった。ステージ下にはそれまでさほど目立たなかったカメラマン達が驚くほどたくさん集まっていて、演奏がはじまった途端にフラッシュの嵐。やはりThe Whoの2度目の出演は大きな注目を集めていたようだった。2日前と同じ「I Can't Explain」で幕を開けた2時間のステージは、まさしく観客の心を燃え立たせ、広い会場全てを震わせてくれるものだった。

後から「Cardiffとワイト島、どっちが良かった?」と聞かれたことが何度かある。その度私は「Cardiffも良かったけど、やっぱりワイト島」と答えた。何が違っていたかというと、Peteの気迫。やはり彼にとってワイト島という場所には特別の感慨があるのだろうか、腕の回し方も、ジャンプの回数も、またそういうわかりやすい形だけではなく本人から感じられる気合のオーラのようなものも、ワイト島の公演では格別だった。ギターはまさしく"on fire"、火を噴く勢いでワイト島の広い空に響き渡り、Pete自身が体の内に炎を秘めているようだった。それに、Rogerの声の伸びやかなこと!彼が60歳だなんてとても信じられない。

序盤の「Baba O'Riley」ではひやりとさせられた。Rogerのハーモニカパートに入ると、途中から私でもわかるほど調子っぱずれな音に。ドラムの方を向き、背をかがめて必死に音を確認するような感じで吹き続けているRogerに、Peteがギターを弾いたまま歩み寄って何事か囁いた。するとRogerはがばっとこちらに向き直り、怒った顔でやおらハーモニカをステージ後方にブン投げた!ひー、Cardiffに続いてここでもキレてる人がいる〜。ハーモニカなしで一体どうするのかと思ったら、Roger以外は全く表情も変えずに演奏続行。おろおろしたりしないのかな、とZakの顔を凝視してみても、何事もなかったようにドラムを叩き続けている。Rogerは憤懣やるかたないといった顔で一人ステージ上をうろうろするのみ、結局ワイト島Babaは途中からハーモニカ抜きで完奏されたのだった。曲が終わってから、Rogerは「スタッフがまたキーの違うハーモニカを渡しやがった!」というような感じのことをまくし立ててぷりぷりしていた。

別の意味でひやりとしたのは、「Love Reign O'er Me」がはじまると隣に立っていたお兄さんが煙草を取り出して吸い出したこと。PeteがMCで「俺達が前に出た時には65万人も集まった。今年は7万だろ?ずいぶん静かだな」みたいな感じでふざけて言っていたけど、もちろん静かだなんてとんでもなく、通勤ラッシュも顔負けの状況で何もそんなチャレンジャーなことしなくても。苦労してライターを灯して掲げている人もいた。近くの人の髪が燃えちゃうよー。ただ、その気持ちはわからなくもない。きっと会場の後ろの方ではライターの灯りがたくさん灯っていたんだろうと思う。この時ばかりは後ろで見てみたかった。

セットの半分ほどが終わる頃には日もとっぷりと暮れていた。観客のヴォルテージはそれに反比例して高まっていくばかり。ギターを提げたRogerとPeteが2人が照明を浴びながら「Naked Eye」を奏でた瞬間は、言葉を失うほど幻想的で美しかった。MCで「お前ももう60歳だもんな」「お前も同じだろ」みたいな軽口を叩いていた2人。確かに年は取っている。Peteのジャンプは昔のライブ映像で見るほど高くないし、Rogerは昔ほど軽々と高音を出すことができなくなった。でも圧倒的なパワーでステージを繰り広げていく彼らの姿は、あるがままの美しさとふてぶてしいかっこよさに満ちていた。

それにしてもこのワイト島におけるPeteの気合の入りようと言ったら!オフィシャルサイトにアップされた写真にはPeteのジャンプ姿がやたらに多い。確かにそれだけ跳んでいた。また実際に見て知ったことなんだけど、ウィンドミルを決めている時のPeteはいつも眉間に深く深く皺を寄せて歯を食いしばり、この上ない苦悶の表情でいるのだった。指でも切ってないかとつい確認してしまう。どんなことを思いながら腕を回して客席を沸かせてるんだろう?そしてどの曲の時だったか、両腕を上げて例のbirdmanのポーズを決めたPeteが放っていた、全てを威圧する程の迫力。それを目にした私の頭に浮かんだのは荘厳という言葉だった。大袈裟と言われようがファンの欲目と思われようが構わない。

本編最後はCardiffと同じく「Won't Get Fooled Again」。イントロのシンセが会場全体を飲み込んでいく様はまさしく壮観。そしてRogerのシャウトと共にあちこちで突き出される拳……揺るぎないThe Whoに、彼らの持つ世界に心が震えた瞬間だった。

公式サイトでは「Won't Get〜」に続けてすぐTOMMYメドレーを演奏し、第1アンコールが「Magic Bus」だったと書かれている。確かに見ていた限り「Won't Get〜」の後で一度ステージを降りたわけではなかったけど、一応これで一区切りという感じだったので、私の中では第1アンコールがTOMMYメドレー、第2アンコールが「Magic Bus」と認識されている。Cardiffと比べると全曲フルコーラス大合唱とまではいかないワイト島観客も、「Pinball Wizard」では歌う歌う!「Sparks」でのPeteのギターはあまりに饒舌で、一音一音が飛び跳ねているよう。今回のツアーの「Listening To You」は、テンポアップしていきつつも段々シンプルに変わっていき、最後はじっくり溜めて盛り上げて終わる。上のパートを一緒に歌いながら自分がこの場にいられることの幸せに酔った。思えばはるばる来たもんだ……。

一度挨拶した後、期待通り「Magic Bus」へとなだれ込んだ。これが、Cardiffよりずっと長くて熱かった!嬉しい!PeteのギターとRogerのハーモニカが会話するようなやり取りもあり、彼らもきっとやっていて気持ちいいんだろうなということが伝わってきた。『LIVE AT LEEDS』に入っているような「Magic Bus」は聞く時の気分によっては冗長だと感じても、こうして生で聞く分にはいつまででも聞いていたい。彼らの音に身を任せていたい。

それでも終わりの時はきて、メンバー達は晴れやかな笑顔で手を振って去っていった。ワイト島という特別な場所で、何万人と集まる中で行ったライブは彼らにとっても感慨深いものがあっただろうと思う。多大なる時間と手間を掛けて、まさにこの場所でThe Whoを見たというのはとてもスペシャルな体験だった。待っている間も、彼らが出てきた瞬間も、彼らが生み出す一音一音も、「Thank you」と繰り返してRogerと共にステージを去っていったPeteの姿も、何もかもが格別な時間だった。ああ、最高だったなあ、と素直にシンプルに思った。ワイト島で見るThe Whoは最高だったなあ、と。

全てが終わったのは11時半頃。潮が引くように皆それぞれの場所へと戻っていく。腰に巻いていたフリースジャケットが下に落ちて無残にも踏み潰されていたのを探して拾い、ライブ中人ごみの中でつぶされそうになっている私を色々と助けてくれたイタリアのThe Whoファンの人とお喋りして帰った。Cardiffのライブの後とは違って晴れやかな気分で、2日分のThe Whoの思い出を胸に刻みなおすように、次から次へと言葉が出てきた。来てよかった、ここでThe Whoを見られてよかった。一面に広がるビールのコップなどの大量のゴミの山を踏み越えながら、感慨深くステージを振り返りながらそう思った。

(2004/07/05 hime : 「THREE COOL CATS」よりテキスト一部修正)


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