2002.09.19 Denver 2

[Setlist]
I Can't Explain / Substitute / Anyway Anyhow Anywhere / Who Are You / Another Tricky Day / Relay / Bargain / Baba O'Riley / Sea And Sand / 5:15 / Love Reign O'er Me / Eminence Front / Behind Blue Eyes / You Better You Bet / The Kids Are Alright / My Generation / Won't Get Fooled Again

(encore) Pinball Wizard / Amazing Journey / Sparks / See Me Feel Me / Listening To You 


Denver?アメリカ合衆国コロラド州の州都。ロッキー山脈の麓、高度1600メートルの高地にある都市。

私にとっての初WHOは、いろいろ事情があってこのデンバーとなった。
ライブの2日前にデンバー入りし、ライブ前日はのんきに観光。途中からあいにくの雨になってしまった。
観光ツアーが終わって、客をそれぞれのホテルへ送り届けてくれる時、郊外のホテル(WHOのライブ会場に近かった)に宿泊していた私たちだけが、最後まで車に残る形となった。
運転手が聞いてくる。「デンバーには観光で来たの?」
「The Whoを見に来たの」と答えると、
「The Who?Roger Daltreyの?(ここで運転中にもかかわらず、腕をぐるぐる回す)」
「Daltrey」という発音があまりに英語で聞き取れなかったのだが(日本語発音の「ダルトリー」以外を聞いたのは初めてだった)、運ちゃんの腕の仕草で分かり「そうそうそう!」と興奮気味に答える。
「俺も昔見たよ。」
ここで車内のボルテージは一気に上がる。聞けばこの運ちゃん、26年前にこのデンバーでThe Whoのライブを体験しているらしい。もちろん、Keithがいる頃だ。
それから運ちゃんは、その時のライブの様子などいろいろ話してくれた。アメリカ人にとって、The Whoってこんなに身近な存在なんだ、と思わずにはいられない瞬間だった。そしてそれは、翌日のライブ会場でも思い知る事でもあった。

ライブ当日。
前日運ちゃんから「開場は野外だよ。今日みたいに雨が降らないといいね」と言われて初めて「野外」だと言う事実を知ったのだが、この日は幸いにも快晴。昨日の雨が嘘のようだ。日ごろの行いがよいのだろう(笑)。
夕方ホテルから車で、会場まで連れて行ってもらう。開場前にもかかわらず、結構な人だかり。
チケットを窓口預かりにしてもらっていたので、早速引き換えにいく。IDが必要だ、と言われパスポートを見せると、窓口のお姉さんはとっても珍しそうに「見て見て、日本のパスポートよ」と隣の窓口のお姉さんにわざわざ見せていた。
日本人、というか東洋人がこのライブに来ているのがかなり珍しかったのか、開場を並んで待つ間にも周りの人から声をかけられる。どこから来たのか、なぜデンバーなのか、挙句の果てには日本企業がどうだとか、ニュージーランドがどうとかこうとか(この辺りになると貧弱な英語力が災いして、一体何を言われているのかさっぱり分からなくなる)、Whoとは全く関係ない話題が繰り広げられていった。
しかし気になるのは、みんな手に毛布を持っていたり、厚手のジャケットやジャンパーを着ていること。それなりに重ね着はしていったが、日が傾くにつれ、どんどん冷え込んでくる。忘れていた、ここは1600メートルの高地だった!

ようやく開場。
後から分かった事であるが、開場を待っていた人たちは、後ろの方の芝生席(野球の外野自由席のようなもの)でいい位置をキープする為に早くから並んでいたのだった。すでに前の方の席を押さえていた私たちは、全く並ぶ必要はなかった訳だ。
ただ、早く来た事で、ライブ会場の雰囲気を満喫する事ができた。飲食物を売るお店が並び、その前には小さなステージが設置され、地元のバンドだろうか、ずっと演奏して雰囲気を盛り上げている。一種のお祭り会場のようだ。
グッズ売り場はいろいろあって目移りする。パンフはもちろん、女性用Tシャツと、必要に迫られてブランケットを購入。これがなければ、寒がりな私はあの寒さに耐えられなかっただろう。
座席に向かうと、席は少し左よりの前から20列目くらい。思ったよりかなり近い位置。周りは、往年のファン(これは夫婦連れが多い)から若い人たちまで、かなり幅広い年齢層だった。WhoTシャツを着ている人も多く、さすがWHOの存在はアメリカで浸透しているなぁ、と妙な所で感心する。
前座はCounting Crows。一応ちゃんと聴いておこう、と思い席に座る。でも周りはほとんど聴いてなさそう。あぁ、Robert Plantが前座のライブでなくてよかった!(こんなに誰も聴いてないようなところでの彼の姿は見たくなかった・笑)。
夜も更け、寒さが身にしみる午後8時半前になり、ようやく待ちに待ったThe Whoが私たちの前に!
とその前に、スクリーンで生前のJohnが映し出される。リハーサルの様子や彼の姿が映し出される度に、何だかぐっと来てしまう。最後に彼の姿が大写しになった時に、拍手が沸き起こる。まだJohnが亡くなって3ヶ月弱、本来ならこのステージにも彼の姿はあったはずなのに。他の観客も、まだ信じられないという思いの人も多かった事だろう。

満を持して、The Whoの登場!
最初は「I Can't Explain」!未だにデビュー曲でオープニングを飾るグループというのもなかなか珍しい、というのをどこかで読んだ記憶があるが、確かにそうだ。一気に1965年にタイムスリップするような気分。Rogerは本当にマイクを回しているし、Peteは本当に腕を回している。うわ、今までビデオで見たのと本当に一緒だ!いや、目の前にいるのは本当に彼ら本人なんだ!何ともいえない高揚感が襲ってくる。
まさか、生涯のうちで彼らのライブを見ることができる日がくるとは、正直考えていなかった。ライブ活動(というかWHO自体の活動)をしていなかった時期にファンになった私にとって、WHOは歴史上の人物のような感覚だった。
観客はみんな立ち上がっている。みんなRogerと一緒に歌っている。いいなぁ、こんな時は歌詞を全然覚えていない自分が情けなく、恥ずかしくなる。静かに耳を傾ける時は傾け、盛り上がる時は思いっきり盛り上がり、それぞれがそれぞれの思いでWhoを楽しんでいる。そんなステージと観客が一体となった雰囲気は初めてだった。日本でもいろいろライブを見ているが、ここまでアーティストと一緒に盛り上がっているライブは初めてだ。

私は英語がよく分かってないのだが、MCでPeteは「今夜は最低のギグになるだろう」と言っていた。これはもちろんジョークで、受け取る側の観客ももちろんそれは分っているから、そういうPeteの一言一言でも盛り上がっている。デンバーが本当に嫌なら、全米ツアーの際にわざわざ入れたりしないはずだ(笑)。
しかし心配な事がひとつ。デンバーは標高が高い為、空気も薄い。そんな所でのRogerの歌声は、気のせいかだんだん苦しそうになっている気がする。歌い終わった後、何となくだが呼吸を整えている感じが…。私自身も、あんまりはしゃいで動きすぎると後で具合が悪くなるんじゃないか、と思ってあんまり動かないようにしていた。(かなり心配性)

野外のせいだからか、音がスコーンと上空へ抜けているような感覚だった。
彼らの時には大きすぎると思われる音も、こだますることなく気持ちいいくらい抜けていく。もしかすると、本当は野外向きのバンドなのかもしれないな、と今更ながら思った。

ただ、今回のライブ、私にとって初のWhoであるにもかかわらず、素直に「凄い!素敵!感動!」だけでは済まされない思いがあった。
もちろん彼らは凄かった。素晴らしかった。「Whoはライブが凄い」といわれるのもうなづけた。
ただ、ただ私はここでJohnの姿が見たかった。Johnのステージ上の姿は幸いにも2度見ることができたのだが、どちらもThe WhoとしてのJohnではなかった。The Beatlesの曲を渋く演奏する彼の姿もそれは魅力的だったが、ファンである私はやはり、The Whoのメンバーとしての彼の姿が見たかった。
会場は盛り上がる。RogerもPeteも、そしてRabbitもZakもSimonも、Johnの代役を無事に勤め上げたPinoもとても盛り上がっていたし、魅力的だった。でも私はライブの間中、ずっと考えてしまっていた事があった。
「Johnがいない…」
彼が亡くなって、そして決めた渡米。初めからそれは自分でもわかっていたはずだ。なのに、ここに来て、やはり彼の不在を思い知らされた。今日の演奏は素晴らしい。でももし彼がいたら、一体どんな事になっていたのだろう?私は彼が好きで、それでWhoが好きになったのに、どうして彼はいないのだろう?
彼がもしこの場にいたら、そしてあの演奏を生で見ることができたら、私は間違いなく空気の薄さなんか気にせずに大騒ぎして、挙句の果てに倒れこんでしまっていたはずだ。

「Johnがいない、Johnがいない、Johnがいない…」

John亡き後もライブ活動を続ける、という決死の思いで演奏しているWhoの面々に、大変失礼な態度であったことは十分承知しているし、大変申し訳ないと思っている。
でも初めてThe Whoを見た私の、正直な気持ちはかなり複雑だったのだ。
その複雑な気持ちはどうにもこうにも自分の中で整理することが難しく、ライブが終わってホテルに戻った後に、部屋の二人に思わず愚痴ってしまった、大人気ない私。

このままでは終われない。2日後にはダラスで再びWhoに会う。その時にはもうちょっと落ち着いて見る事ができるのだろうか?
(Dallas 2に続く)


(2004/12/10 みるきー)


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