2002.08.31 Jones Beach

[Setlist]
I Can't Explain / Substitute / Anyway Anyhow Anywhere / Who Are You / Another Tricky Day / Relay / Bargain / Baba O'Riley / I'm One / Sea and Sand / 5:15 / Love Reign O'er Me / Behind Blue Eyes / You Better You Bet / The Kids Are Alright / My Generation / Won't Get Fooled Again

(encore) Pinball Wizard / Amazing Journey / Sparks / See Me Feel Me / Listening To You 


8月31日、Tommy Hilfiger at Jones Beach Theateでのライブ。前日のPNCで完全に圧倒された私、今度は元々行く予定だった会場で席の心配もなく、ステージももっとよく見えるだろうし、きっとさらなる感動が待っているはず!と胸弾ませて現地へ向かった。でも、もったいない話だけど、実は最初はうまく入り込めなかった。

まず荷物チェックの際にMDプレーヤーを取り上げられて大ショック。せめて見つからなかったデジカメで少しでも音声を録音しようとしてみたり。写真を撮りたいけど誰もそんなことしてる人がいないからモニタを消してこっそり撮ろうとしてみたり。曲目は昨日とまるで同じみたい、はるばる日本から来たのにせめて1曲ぐらい違う曲をやってくれないの?とうじうじ考えたり。ステージ両面に設置されているモニタは薄くて綺麗に見えず、明るいせいかと思ったら太陽が沈んでもそのままで歯がゆい思いをしたり。

一番堪えたのは1曲目が終わってから周りが一斉に座りだして誰一人立っていなかったこと。どうして?どうして座ったままでいられるの?と信じられなかった。でも小心者な私は後ろの人が気になってしまって自分だけ立つということができない。前日は最初の3曲の間何もなくても涙が出たというのにこの日はそんなこともなく、やっぱり昨日の方が曲を知らない分楽しめたのかという気もしてきた。色々な思いが頭の中をぐるぐる回って、せめて音を残さなきゃと思ってごそごそと鞄の中のデジカメを探り、総立ちで盛り上がっている前のブロックをうらやましく見つめるばかり。

演奏はもちろんグレイトで何の文句もつけようがない。PeteもRogerもノリにノっている。曲が終わるとわーっと拍手するし、「Baba O'Riley」ではやっぱり前日のような大騒ぎになって皆が立って合唱してるけど、私は一緒に歌いながらもどこか置いていかれたような、寂しいような気持ちになっていた。このまま自分的にどうにも中途半端なテンションのまま終わってしまうのだろうか……と半ば諦めの気持ちさえ浮かんでいた、それがふと我にかえったのは大好きな、大好きな曲「Love Reign O'er Me」でのことだった。

その時のことは今もはっきり目に浮かぶ。私は(周りと同じように)座ってモニタを見つめていた。前日と変わらず美しく響くイントロとともに鍵盤の上を滑る指が映り、歓声が飛んで、視線をステージの上のRogerに移す。Rogerひとりを照明が明るく照らし出して、すっくと立って手を高く上げた彼が口を開く。「Only love......can make it rain.....」そこで、はっと胸を突かれた。一体私はここで何をしてるんだろう?何をごちゃごちゃくだらないことを気に病んでるんだろう?目の前にPeteが、Rogerが、本物のふたりがいるというのに!

Rogerが会場中に響きわたる声で「Love, Reign o'er me......!!」と歌いあげるころには、私は悪い夢から醒めたような気持ちになっていた。目の前の景色が滲んで、遅れてきた波のように感動がずんずんと胸を突き動かした。何十メートルか離れた向こうにはRogerがいて、マイクを持って、その喉から声を出して歌ってるんだ。Peteがいて、ギターを抱えて、その指でピックを持って音を鳴らしてるんだ。そのことが突然体の中から実感として溢れ出してきた。録音できない。写真も映像もうまく撮れない。凍えるように寒いし皆座ったままだし変わらないセットリストにぼやけたモニタに遠い客席。だから何?それが何だっていうの?

やっと目が見えるようになったみたいな感じだった。デジカメの存在は頭の中から消去した。今、この時間を楽しまなくてどうする?と思った。彼らがステージの上で吐き出した声を、音を、その場で受け止めて、ダイレクトに歓声や歌声で返す。そんな相互のやり取りをするのは今しかできないんだということに気づいて、頭の中が一気にスパークしてしまった。その後の曲は何を聴いても全部泣いた。席に座ったままだったり、立って一緒に歌いながらだったり、どの曲を聴いても涙が止まらなかった。「Behind Blue Eyes」も、「You Better You Bet」も、「The Kids Are Alright」も、「My Generation」も。Peteのギターはまるで炎のよう。モニタなんか見ていられない、ただもうステージ上の2人の動きにひたすら釘付け。

そしてこれだけは座っていられない「Won't Get Fooled Again」で、「I'll tip my hat to the new constitution...」のところを周りのことなんて何も考えないで出せるだけの声を絞り出して歌った。私はここにいるんだ!って叫びたかった。長い長いシンセの間奏で手が痛くなるぐらい手拍子をして、Zakの激しいドラムソロから既に胸がぎゅうっと痛くなる。ああ、Roger、Roger!今も思い出すだけで泣けるRogerのシャウトと一緒になって叫びながら、いろんなこと何もかも吹っ飛んだ。

なんていうんだろう。ライブ映像などを見て「Peteかっこいい〜。Rogerすご〜い。」なんて言ってるのと全然違う。生で聴く彼らの曲は強烈で、パワーの塊みたいで、音の大きさというそれだけじゃなくてお腹に響いて直接心に届く。ライブ後半では観客も皆立ちあがって、海から吹いてくる冷たい風なんて吹き飛ばすほどに熱気が溢れていた。皆が酔いしれて、叫んでいた。

アンコールになると、今度は「ああもうすぐ終わっちゃう……」ってそればかり思って、悲しくて悲しくてそれだけで泣いていた。 「Pinball Wizard」も「Amazing Journey」も、前日に聞いてうわーっすごい!と思った数倍も心に響いた。否応無しに素晴らしい「Sparks」から「See Me Feel Me」につながり、この頃にはあきらめというか、むしろすがすがしい気持ちになっていた。例の「Listning to you, I get the music...」の合唱を、「Won't Get〜」の時と同じようにせいいっぱい歌う。こんな遠くからPeteやRogerに届きようもないけど、でもせめて何か返したかったから歌った。前日と同じように肩を組み、ステージ右に去っていく彼らに、大きく大きく両手を振った。ありがとう、ありがとう、ありがとう、うれしい、大好きだよー!って気持ちをたくさんこめて。

最後にRogerがくるっと振り向いて客席に向かって大きな声でこう言ってくれた時、また涙が溢れて止まらなかった。Roger、その言葉一生忘れないからね!

「I'm always listening to you !!」

(2004/06/22 hime : 「THREE COOL CATS」よりテキスト一部修正)


BACK - HOME