1995.06.18


あれから何年経つんだろう。'95年6月18日、私はJohn Entwistleに会えた。

Ringo Starr All Star Band来日。正直初めは行くつもりはなかった。
先にStingの来日が決まっていて、そちらに2日連続で行くつもりをしていたので、これに行くと3日連続になってしまう。うちから大阪は結構遠い。「しんどいな〜、Ringoやしな〜、別にええか(b-koちゃん、本当にごめん!)」と思ってよくメンバーを確かめると…。

「ベース:ジョン・エントウィッスル」

え〜、ほんま?ほんまに来るん?嘘やろ〜?
とりあえず頭の中がクエスチョンマークばかり。その頃むちゃくちゃな勢いでThe Whoにはまっていた私には、彼の来日は奇跡としかいいようがなかった。The Whoのメンバーなんて一生見られないと思っていたし(当時The Whoとしての活動をしていなかった)、それも大好きなJohn。彼のベースに惚れて、The Whoに惚れたようなもんだ。それを生で見られるなんて。
早速チケットを申し込む。届いたチケットはなんと2列目。やっほ〜!

当日は日曜日。5時から開演、というなんとも中途半端な時間からのライブだったが、これが後に功を奏す。
場所は大阪城ホール。今迄に数々のライブをここで見てきたが、正直ここまで空いていたライブは初めてだった。スタンドに人がいない…。全員アリーナで、それもアリーナの前方にしか人がいないように見える(多分3分の2くらいは埋まっていたのだろうが)。何だか物悲しい気持ちになったが、それでも初めて見る生Johnに、すぐにテンションは高くなりワクワクしっぱなしだった。

ライブが始まる。
「RINGO〜!」と当然Ringoに一杯の声援が送られるが、私の目はJohnに釘付け。
もう彼しか見ていなかった。みんなはRingoを見てるのに、私一人体の角度が違っていたのだが、そんなことは全然気にならなくて、ひたすらJohnばかりを追っていた。
カッコよすぎ。真っ赤な上着に真っ赤な靴(!)、そして真っ赤なベース。
その色に完全にやられたのかもしれない。とんでもない思いが頭を駆け巡る。

「Johnに会おう!」

でも今まで追っかけの経験は全くない。どうやってするのかも全然検討がつかないのだが、「このままでは帰れない」という何だか脅迫めいた思いが頭を支配する。
何としても会おう!もう頭の中はそれしかなかった。

コンサートが終わり、とりあえず大阪城ホールの裏口っぽい所へ行ってみる。
立ち入り禁止と書いてあるようだ。当たり前か。付近には、ビートルズ・ファンの若い女の子2人連れがやはり出待ちをしていた。何となくここから出てきそうな気がして、その子達と3人でしばらく待ってみる。
しばらくすると車が出てきた。Ringoが乗っていたのだろうが、全然覚えていない。私の目はひたすらJohnを探している。そして、ジョンの姿発見!
「ジョ〜ン!」と思い切り叫びながら手をふる。あぁ、彼が私の方を見てくれている(完全に妄想が入っている)。
もう思考回路が「Johnに会う」としか考えられなくなっている私。
何を思ったか、「ホテルまで追っかけよう!」と思いつく。しかし、ホテルってどこなのだ?

私の拙い知識で、大阪城ホール近辺のあるホテルに目をつける。
あそこなら泊まった事あるし、自分でも何となくホテルの中も分かってるから大丈夫だろう。きっとあそこに泊まっているはず。
思い込みとは恐いものだ。何の根拠もなく、私はそのホテルに向かって走り出した。
そして、女の感というのも恐いものだ。本当にRingo御一行様はそのホテルに宿泊していたのである…。

エレベーターホールには、10人くらいの人がたむろしていた。そのうちの数人は、すでにRingoからサインを貰ったりしていた!当たり前だが、車でホテルに戻った彼らは私より先に到着しており、すでに自分たちの部屋へ上がってしまっていたのだ。たむろしていた人たちは、コンサートを途中で抜けてホテルで待っていたらしい。
会おうと思ったら、そこまでしないといけないのか…。
でも一人の人が「きっと夕食食べに外出するはずだから、ここで待っていれば多分会えますよ」と慰めてくれる。
待っている人はRingo目当てであり、「John Entwistleに会いに来た」なんていう奇特な人間はほとんどいないようだった。
もちろんRingoも間近で見たいが、やはり私の目的はJohnただ一人。彼さえ来てくれたらなぁ〜、と勝手な事を考えつつ、ひたすら待つ。家が遠いので、普段ならこんな「追っかけ」など時間が許してくれないのだが、この時は開演時間が早かった事が幸いして、こうやって待つ事ができる。

それから40分くらい待っただろうか。
またエレベーターが開く。ふと見ると、そこから出てきたのはJohn!そしてZak Starkey!
信じられなかった。先程舞台の上でベースをぶんぶんうならせていた憧れの人が、今目の前にいるのだ。
思わず彼目掛けて走りよった…。

いきなり彼の前に立ちはだかる私。向こうもびっくりした事だろう。
周りの人は、初め気付かなかったようで、私が突進した事で「あ、Johnだ」と気付いた模様。

「す、すみません。握手してもらえますか?」

一生懸命に、震えながら英語で話す。Johnは、ちょっとおどけた様子で何か私にしゃべってくれた。

「・・・・・(この部分は英語が理解できなかった)you look like "MY WIFE"・・・・(またもや分からず)」

そして握手。わぁ、大きい手やわ。あったかいなぁ。
英語力のあまりない私は、勝手に「”My Wife”の歌詞って、確か追いかけられるって感じの意味やったから、私が2回も追いかけたことを分かってたんやわ!いや〜、嬉しい!」と勘違いな解釈をして幸せに浸っていた。
本当にそんな意味のことを言っていたのかは、今となってははなはだ疑問なのだが、それでも車に手を振ったのと、ホテルに待ち伏せしたのが同一人物なのは、分かってくれてたかもしれない。
(本当は何て言ってたんだろう?今なら英語力もあの頃より少しはマシだと思うのだが)

周りの人は、用意していた油性ペンなどをジョンに差し出して、サインをしてもらい始めた。あ、ええな〜、私全然そんな用意してへんかった、などと思っていると一人の人が「サインしてもらったら?」と言ってくれたので、思わずその日CDウォークマンで聞いていたWhoの『LIVE AT LEEDS』のCDを差し出してサインしてもらう(リンゴのコンサートなのに、そんなものを聞きながら大阪まで行った私…)。
それから厚かましくも、コンサートのパンフも差し出して、これにもサインを頂く。
そしたらJohnが「これ君の?」という感じでペンを私に返そうとしたので、
「いやいや、私のじゃないですよ」と答えた。

そのうち他のオールスターのメンバー(Ringoを除く。結局私がホテルにいる間にはRingoは下りてこなかった)もロビーに下りてきて、一大サイン会みたいな状態に。インスタントカメラで一緒に写真を撮っている人もいた。
でも私はもう他の人のことは全く考えられず(今となればザックには貰っておけばよかった)、力が抜けてしまってうずくまって震えていた。一緒に待っていた人からは「よかったね〜、おめでとう」と祝福されるし、もう頭の中が真っ白で、今起こったことが本当に現実の事とはにわかには信じがたかった。

Johnに、あのJohnに会った!
それも少しだけ、お話する事もできた。その、もう二度と体験できないような素敵な出来事で、夢の中で生活するような感じだった。何日間か睡眠不足でボーっとしていた。
今でも、時々「あれは夢だったのじゃないか」と思う時がある。でもこの通り、証拠の品。


John、本当にありがとう。
素晴らしい音楽と、そして素敵な思い出をありがとう。

(2004/06/22 みるきー : 「Tin Soldier」よりテキスト一部修正)


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