INTERVIEW 001

ザ・フー・ファンクラブ会長対談2009 Part2


 そしてここからが本題。2008年11月の来日公演。お二人はどのような感想を持たれたのでしょうか。


円熟したザ・フーを迎えるにあたり…

WHO's Generation(以下、W):単独来日が決まった時、どのような状況でそれを耳にし、どのように思われましたか。

保科氏(以下、保):誰に聞いたのかなあ。

W:正式な発表が6月23日の月曜日、新聞だったんですけど、マスコミはその前の週の水曜日に多分耳にしていたかと…。

保:そうだね、多分それぐらいに聞いたんだと思うけど。その前に2004年に来たじゃない?フェスで、ウドーのやつで。そっから、本当は翌年か遅くても翌々年ぐらいには、来るっていう噂もあったのね。で、フーのメンバーも日本を気に入ったみたいで、すぐまた来たいという話もあったし。あとフジロックでオファーしてたっていう話もあって、まあそれはちょっとギャラが折り合わなくて駄目になっちゃったみたいなんだけど。そんなこともあったんで、「あ、もうこりゃもうないのかな」と…「単独はもうないんじゃないか」って、実はもう半ば諦めてたんだよね。だから6月に初めて決まったって聞いた時、「うーん、いや、ようやくか」って。遅きに失したって感じはしたんだけれども。前澤君は単独決まってどう感じた?

前澤氏(以下、前):僕はね正直言えば、「今更また」っていう…。もう来ないでいいっていうわけじゃなくて、「なんで70年代に…バンドも若くて勢いがあった時に来てくれなかったのかな」って。まあ、2004年の時も思ってるんだけど、そういうことをやっぱり思った。それはなぜかって言うと、僕は今まで7ツアーで16回ぐらいフーを見ているんだけど、いつも最初見る時不安なの。もうさすがに、フーのライブを見てガッカリしちゃうんじゃないかなって。ガッカリしちゃうことが嫌だし、怖かったの。で、その7ツアーは不安で見てたの。82年に初めて見たんですけど、その時すら、多分自分がイメージしているフーと違っちゃってたら嫌だよなあとか、そういう気持ちがあって。恐る恐る見に行くっていうのがね、今でもそう。だけども、フーはそういう自分の不安とか予想をいつも覆してくれる。「うわ、まだすげえや、まだすげえや」って。

W:「まだ格好いい」って?

前:そう。それは当然向こうで何回か見ている時もそうだし、2004年の時も完全な単独公演じゃないけれどもそう感じたしね。で、今回もさすがにもう64(歳)とか63になれば、それはね、色々肉体的な衰えもあるだろうから、昔のような演奏とか盛り上がりを期待しちゃいけないよなあって思いながら行ったんだけれども、やっぱり今は今でライブバンドだなっていう。

W:では単独決まった時も、初めに嬉しいっていうよりは、こう、怖いとかやっぱりその方が勝る?

前:そう、怖い、不安とかね。単独公演やって、「なんだ、フーってこんなもんか」って初めて見るファンに思われたくないっていうのがあるわけ。だったらもう「伝説のままでいいや」っていうのが僕は正直ある。伝説のライブバンド、世界最高のライブバンドっていうことで、「来ないなら来ないでもいいかな」っていうのは本当にあるのね。見たいんだったら向こう(海外に)行って見れるわけだし、見てたわけだし。でも、不安を払拭してくれたよね、今回。っていう思いで、僕は今はとっても満足です。

保:だから、見ない奴には「どうせ良くないに決まってる」とか言われたくないんだよね。

前:そうそう。

保:やっぱり見てほしかったと思うしね。見ればまた、絶対納得させるだけのライブはやれてるからね、まだね。多分本人達がもうやれなくなったらやらないと思うし、多分。だから本人達がやる以上は、それなりのものは見せる自信があるからやるわけでね。確かにジョンも欠け、っていうのもあるけど2004年の時も充分いいライブだったし…。俺が最初に見たのはライブエイドの時だから、本当にバリバリだったんだよね。

前:85年ね。

保:80年代の、まだ、あの時代のフーってドラムが違うだけで、でもすごい良かったと思うんだよね。

前:そうですね。

保:82年も良かったでしょ?勿論。

前:良かったですよ。はい。

保:多分勿論、昔の方がいいに決まってるんだよね、少しでも昔の方が。やっぱりそれは体力的な問題とか色々あるから。

前:でも逆に今、貫禄というか、あの円熟味というか、それも加わった気がするんですよ。例えば今回のツアーで、あの「ティー&シアター」を最後にやるじゃないですか。あんなアコギ1本でロジャーとピートが2人だけでライブ終わるなんていうのは、昔のフーだったら考えらんないわけですよ。

保:考えられないね。

前:それは63と64になったからこそ出来る、そういうまあ演出というかね、まあスタイル。

保:まあ年相応のっていうか、そういうのを見せられるようになったっていうのはやっぱりあるね。それがいいとこだと思うよね。もう昔みたいにギター壊したりジャンプしたりなんて出来ないんだから、出来ないっていうかやらないわけだから。

前:やらないわけだしね。

保:だから、そうじゃない今の自分、今のフーっていうのがあってもいいと思うし、やるからには、この次にまた違うフーを見せてくれるだろうし。そうでなければ俺達も同じの毎回見たいわけでもわけでもないし、ってことだと思うんだよね。

単独ツアーを追って

W:ザ・フーもこうやって年を重ねていって、で、ファンの方もまあ随分年を重ねて、年配の方が多くなっている中で、チケットを取っただけで力尽きちゃったって、もう喜びの絶頂になっちゃったって人がいたんですけど。お二人は、発表になってから当日を迎えられるまでに、どんな思いでいたんですか。

保:さっき前澤君が言ったみたいに、本当にちゃんと納得させるだけ、満足させられるだけのライブを見せることができるんだろうかって不安はやっぱりあったよね、当然。だから何だろう、音が出るまで、1曲目終わるまで、やっぱ、他人事とは思えない、なんか責任を共同で感じているような気分で客の反応を見ちゃうっていうかね。割とこう、入り込めない。1曲目終わるまではちょっと入り込めなかったかな。

前:ああ。

保:PAの調子どうだろうとか、そういうのも含めてね。演奏のバランスとか全部含めて、とりあえず1曲終わるまではすごい不安だった。始まるまではやっぱりワクワク……わりと近くで単独で見るって体験はそうないわけだからね。だから楽しみな反面、やっぱりすごく不安っていうのが濃かったかもしれないね。

W:公演は、保科さんは大阪以外……?

保:うん、全部見た。横浜から見て、横浜もね、すごい。ねえ、これはもう大成功だなっていう、このツアー大成功するなって思ったし。大阪から見てどうだった?

前:大阪は、まあ色んな意見があるでしょうけど、僕は大阪盛り上がるっていう……

保:客はノリがいいっていう話だよね。

前:それはもう70年から、関東でやる公演より関西でやった方が、地域性っていうか、県民性じゃないけど、関西人のノリっていうのがもしあるんだとしたら、すごく大騒ぎするっていうイメージがあったし。かつて僕が向こうで見た時も、そういう東京よりノリいいじゃないっていうのがあったの。ところがフーに関して言うと、あんまりそんなに盛り上がってる感じしないなって、僕は正直ちょっと思ったの。

W:それは1公演目を見たその時の感想ですか?それとも他の残り4公演と比べての?

前:比べて比べて。

保:客の入りはどのぐらいだったの?大阪。

前:8割ぐらいかなあ。ねえ。9割か8割か、そんなもん。後ろの方に空きがあって。

W:第一印象としては、すっごい男性が多いということですよね。

前:ああそうだね。

保:大阪城ホールだっけ。

前:そうです。

保:キャパでかいからね。

前:大きいですよね。

保:なるほどね。じゃあ、あんまりこう、他の…さいたまとか武道館みたいな盛り上がりはなかったんだ。

前:ないない。で、横浜もね、ちょっと場所が横浜でなおかつ金曜日だっていうんで、ちょっとね……8割ぐらいでね。

W:満員とはいかない感じですよね。

前:いかなかった。

保:一番入ってなかったよね、関東は横浜がね。

W:条件としては悪かったですよね、金曜で横浜だと東京でお勤めしている方は行かれないということで。

保:さいたまはけっこう東北方面から新幹線で日帰りできるっていうところで来る人もいたけど、横浜って一番中途半端なんだよね。静岡とか名古屋だったら多分大阪行っちゃうし。

前:けっこう遠いんですよね。

保:一番ちょっと横浜難しかったんだと思うね、確かにね。

前:あと横浜のピートが、僕はずっと不機嫌に思えてて、他の公演だとけっこう笑顔があったんだけど、横浜の時すごい不機嫌で、ギターの受け渡しの時も、なんかすごく…

W:ひったくるような感じで。

前:そう、ひったくるようなことがあった。

保:そうだね。

前:何が機嫌が悪いかはわからないけど。

W:PAに向かってクビのジェスチャーしてたのは横浜でしたっけ。

保:横浜。そうそう。

W:だから音的にも……

保:多分満足いかなかったんだろうね。あの、アンプの出音か、サイドフィルのモニターの音か何かわかんないけど、まあなんか機嫌悪かったのは確かだよね。

W:あとまあ、機材的にも、大阪からもうずっとトラブっていて、まずハモンドオルガンが使えなかったって……。使ってなかったのか、音がちゃんと出なかったのかわからないんですけど、それはラビットがもうかなり怒っていて。

前:あ、そうだったんだ。

W:とにかくまあ機材的には前半の2公演ていうのはちょっと条件悪かったかなっていうのもあって。

前:なるほどね。

W;ま、お客の入りは別として、フーの調子っていうのも後ろに向かってこう、上り調子というか。

前:まあね。

保:それはあるね。

前:さいたまもよかったけど、次に武道館に初登場っていうのがやっぱりよかった。

保:そうだね。

ザ・フーついに日本武道館に立つ

前:70年代、向こうから来る人達のコンサートのメイン会場っていうのは武道館なわけじゃない、東京ドームもないから。そう考えた時、やっぱりあの古いファンはやっぱり武道館でフーを見たいなって、自分もそうなんだけど、そう思ってる人も沢山いたと思うし。

保:ね。

前:そのまあ、長年の夢が、「ああ武道館にフーが登場するな」っていうことを僕は思ったし。追加公演が出るまでは東京1回だったから完全に売り切れ状態で、本当に熱心な人が11月17日の武道館に集まったと思うんですよ。

保:始まる前のねえ、SEっていうか音楽が流れてる時に……

前:デヴィッド・ボウイの「ジーン・ジニー」を皆で歌っちゃうなんてねえ。(笑)

保:うん、ああいうのって本当ねえ、70年代初期の武道館ってああいう感じだった。出待ちする時にも皆で手拍子とか。

前:もう本当に待ちきれない!みたいな。

保:何か、すごいフラッシュバックしたね。

前:僕もそう思った。

保:70年代の、ツェッペリンとかパープル待ってるみたいな感じの。ああいう雰囲気。

前:だんだん皆コンサート慣れしちゃって、皆もう暗くなるまでダラーッてしてる状態になっているわけですもん、80年代以降は。

保:あんな何かこう、客みんな気持ち一つになって、フーの出番待って、もう興奮して待ってるっていうのが、ウルッときたね。感動したね、あれは。

W:本当に一体感がありましたよね。

保:武道館っていうロケーションがね、やっぱり特別だから。ピートもあれだけMCで言ってたみたいに、武道館って絶対(彼らの)耳に入ってるし、70年代に日本でやりたかったって思ってただろうし、皆武道館でやってるっていうのを知ってるわけで、やっぱり特別なものって絶対あると思うよね。

前:でもあの時代武道館で、多分ね、できなかった。

保:フーはね。(笑)

前:だって71年と72年にレッド・ツェッペリンが、一番ピークの、人気絶頂のレッド・ツェッペリンが、2回ですよ。東京公演2回。まあ満員になるけど。

保:うん。

前:で、その時日本で火が点かないフーが武道館でやったら、1回やっても、もしかしたらダメだったかもしれない。

保:まあだめだっただろうね。

前:71年とかだったら。

保:うん、やっぱりホールが渋公とか厚年とかが多分精一杯だったかもしれないね。だからもうギャラが。

前:折り合わない。(笑)

保:うん。

前:だから冷静に考えれば、あの頃に来られるはずがなかったの、日本に。

保:でもまあ、それでも来てれば歴史変わってたんだけどね。フーの人気も変わったし、ロックに対する接し方も、日本人皆変わったと思うんだけどね。それぐらい(ザ・フーは)大きなバンドだったと思うからね。それが悔しいけど。

前:そうですね。

W:そんな武道館に、今やっとという。

前:今やっと上がってきた、登場した、か。

W:ご自身の席から後ろのお客さんを見てけっこう感動されてましたけど。

前:そうなんだよね、やっぱり僕は前で見たいけど後ろも気になるという、そういう状態で。

保:うんうん。(笑)

前:前から2列目で見てたんで、後ろが気になって後ろが気になって。

保:(笑)どういう風に受けているかねえ、気になるよねえ。

W:お客さんの反応でどこらへんに一番感動されました?

前:やっぱり見るポイントってあるわけで。例えば「ババ・オライリー」のピートのボーカルパートのところを、「Don't cry〜」を皆がどのぐらい歌うか、とかね。(笑)

保:うんうん。

前:その辺は当然もう、ピートよりもむしろ会場の方に目がいっちゃうみたいなね。それはけっこう日本でも「おお、歌ってんじゃん」って。あれがアメリカみたいで見るともう大合唱でものすごいんだけど、それが日本でもそれに近い状態になれたなっていうのが、やっぱり17日の武道館で一番それが際立ってたんで……嬉しかったね。

保:武道館は小屋の作りもそうだけど、けっこう声が中央に集まるから。

前:全体が見られるっていうのがあるよね。

保:すごくいいよね。あの反響効果ね。他の会場と違って、すごいあったかいですよね。

前:でも昔ほど広いっていう感覚もないしね。

保:ないね、もう。もう武道館狭いよね。

前:狭く感じるね。(笑)

W:感じましたね、久しぶりに行ったら、「あれ?武道館ってこんなにギュっとしてるかなあ」っていう。まあ一体感もあったってこともあるんですけどね。

保:まあでも、お客さんが、これだけ本当にフーのファンって日本にいたのかって、けっこう思ったな。

前:それは僕のまわりでも言ってましたよ。昔からのファンは。

保:どこに隠れてたんだっていう感じ?(笑)

前:そうですね。

保:本当に、真剣に感動している若い人も多かったし。けっこう泣いてる子なんかもいたし、びっくりしたよね。え、こんなフーって愛されてるわけ?みたいな。

W:勿論中心は40代以上の方が多かったけれども、若いファンもけっこう多いと思いましたよね。

保:多かったよね。

前:(ライブ後、打ち上げの飲み会にノリで誘っちゃった知り合いでもない若い子が二人いたんだけど)20歳の大学生が大阪から全部まわってるんですよ。

保:へえ、それはすごいな。

前:それと25歳の女性は、ビートルズファンだったんだけれども、(ポール・マッカートニー主催の)『コンサート・フォー・ニューヨークシティ』を……ポールが出るからってずっとテレビで見てたら、フーが出てきて、「何だこれは」って。「こんなバンドがいたのか」って言って。それからもうほんとフーオンリーのファンになっちゃったんですよ。

保:ああ。

前:そう思うとやっぱり未だに……

W:最近のフーを見てですら、こう引き込まれるファンがまだいるということ!

保・前:そうそう!

W;その魅力って何なんでしょうね。今回のツアーを通して現在のザ・フーのライブ力(りょく)を振り返りながら、引き続きその辺りの魅力を探っていきたいと思います。

Part3へ続く)

大阪城ホール前の立て看板(11/13撮影)と、武道館正面(11/19撮影)。


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